インドネシアで起きたクーデター・大虐殺の実行犯だったおじさんと、アメリカ人監督のインタビュー・再現ドラマを通して描かれる真実。後味の悪い大爆笑。我々にとって決して他人ごとじゃないドキュメンタリー。
吹き替えについて
インドネシアの真実を描いた衝撃作「アクト・オブ・キリング」
皆さんは近々公開される映画「アクト・オブ・キリング」をご存知ですか?私は試写会でこの映画を鑑賞しました。とても衝撃的な内容です。
デヴィ夫人の夫だったインドネシア・スカルノ大統領が軍事クーデターで失脚し、反逆軍による大虐殺が行われた事実を、反逆軍メンバーが語る作品です。内容が内容なので、吹き替えはありません。
アクト・オブ・キリングの主人公は反逆軍に参加したアンクルおじさんと監督ジョシュア・オッペンハイマー。ジョシュアによるインタビューの中で再現ドラマを欲したアンクルが
自ら再現ドラマを制作していく中で、ようやく虐殺された庶民の気持ちを理解し葛藤していくという作品です。とても重たい作品ですが、観客の反応は意外なものでした。
なんと、多くの観客が爆笑していたんです!これは決して不謹慎ではありません。アクト・オブ・キリングに出てくる人物・出来事があまりにもひどすぎるため、意図せず笑ってしまうんです。
再現ドラマの質もひどくて笑ってしまいます。これはプロの声優による吹き替え上映ではかき消されてしまうたぐいの酷さ。なんせ参加者全員が素人ですからね。吹き替えじゃないほうが面白い映画は確実に存在するんです。
まるでアンビリバボーの再現ドラマにビートたけし本人が出演したかのような状態です。私は、アクト・オブ・キリングの笑いほど後味の悪い笑いを知りません。大爆笑なんです。
日本政府はクーデター側を支援したため、この大虐殺を見て見ぬふりをしたということになります。だから、他人ごとじゃないんですよ。
吹き替えでは出ない緊張感を全身で感じることが出来る、ドキュメンタリー史に残る傑作です。