「紙の月」あらすじと感想(ネタバレなし)

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銀行の契約社員として働く平凡な主婦が起こした巨額横領事件。最初に彼女が手にしたのは、たった1万円だけだった―。直木賞作家・角田光代原作のベストセラー小説待望の映画化です。

紙の月

あらすじ

紙の月」のあらすじです。

バブル崩壊直後の1994年、結婚を機に家庭に入ったものの、子どもも出来ず夫との2人暮らしに窮屈さを感じていた主婦・梅澤梨花は、銀行の契約社員として働くことにします。

梨花は、外回りの営業という仕事にやりがいを感じ、丁寧な仕事振りで顧客からも信頼も得て、上司からも高い評価を受けるようになりますが、自分への関心の薄い夫・正文との間には、空虚感が漂い始めているのを感じていました。

そんなある日、梨花は、顧客の孫で年下の大学生・光太と出会います。
自分は年上のおばさんだと思っている梨花は、「最初に会った時、いいなと思ったんだ」と褒めてくれた光太と過ごすうち、ふと、顧客から預かったお金で高価な化粧品を買ってしまいます。
最初に手を付けたのは1万円だけで、すぐに返したものの、その日から梨花の感覚は狂い始めるのです。

異動で夫が家を空けることが増えるに連れ、光太と会う回数も多くなり、ついに2人は一線を超えてしまいます。
光太と過ごすために使うお金も増えていき、それに連れて梨花が着服するお金も、いつの間にか梨花の手に負えない金額に膨らんでいったのでした。

やがて、梨花の不正が明るみに出る日が来るのですが、結果、梨花が取った行動とは―。

作品概要

「紙の月」の概要をネタバレなしで説明します。

この映画は、直木賞作家・角田光代による同名小説の映画化作品です。
原作は、2012年に第25回柴田錬三郎賞を受賞したベストセラー小説で、2007年から2008年にかけて新聞小説として連載されたものをまとめたものです。
著者の角田光代は、ニュースで女性の銀行員が使い込みをしたという事件を調べると、たいてい『男性に対して貢ぐ』という形になっていることに違和感を覚え、『お金を介在してしか恋愛できなかった』という能動的な女性を描きたいという思いが湧き上がったということで、この作品を書いたそうです。

また、第36回日本アカデミー賞で最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀編集賞の三冠に輝いた「桐島、部活やめるってよ」の吉田大八が監督を務めます。

キャストに関しては、主役の梅澤梨花役の宮沢りえは、「オリヲン座からの招待状」以来、映画の主演は7年ぶりとなるそうです。
また、宮沢りえの相手役を務める光太役の池松壮亮は、「愛の渦」「海を感じる時」などへの出演でも話題ですが、役柄にこだわらず、様々な話題作に出演しています。
映画オリジナルの登場人物として、梨花の不正に厳しく迫る銀行事務員役のキャストとして小林聡美が配されており、銀行内部でのシーンに厚みを与えています。

予告編動画

感想

「紙の月」の感想です。

原作の小説の著者は「八日目の蝉」も映画化された直木賞作家の角田光代ですが、女性作家らしく、主人公の心理が繊細ですがドライに描かれています。

真面目で平凡な主婦が、夫との気持ちのすれ違いを感じながら、淡々とした生活を送っているところからストーリーは始まります。
そんな平凡な主婦が、銀行にパートに出始め、ふとしたことをきっかけに、徐々に感覚を狂わせ、少しずつ事態が大きくなっていくさまが緊張感を感じさせられるのです。

梨花と光太との関係が深みにはまって行くに連れ、梨花の銀行からの横領額も加速度的に増えていくのですが、「もう後戻りは出来ないのだ」という事態になっていることに梨花が気づいたときから、光太との関係がいつまで、どこまで続くのか、そして横領の事実が、いつ、誰に見つかってしまうのか、そんな不安が徐々に膨らんでいく様子が、スリリングに感じられます。

宮沢りえが主人公の梨花役を演じていますが、40代になったとは言え、変わらない美貌の彼女が『平凡な主婦』役はイメージに合わないのではないかと思いましたが、今や本格派女優としての評価が定着しつつある彼女が、どのように演じているのか楽しみです。