謎の大金持ちギャツビーの正体はいかに、その半生を隣人であり、デイジーのいとこであるニックの語りで、紐解いていきます。多くを望みすぎることが、ギャツビーの一度は叶ったかのように見えた恋も夢も人生も、奪っていくことに。おそらく、このギャツビーの恐ろしい姿がなければ、最後にデイジーがトムに寝返ってギャツビーを見捨てることはなかったのではないかと思われます。むしろギャツビーの最期よりもクライマックスに見えるシーンは必見です。
ネタバレ
まずは華麗なるギャツビーのネタバレです。
お城の夜な夜な開かれているパーティーの参加者は、ギャツビーが存在しているかどうかもわからないと皆口々に言います。ギャツビーの経歴について皆が噂する中には、人殺しというものさえあります。でもそんなこともありだとニックは語ります。
ネタバレですが、「華麗なるギャツビー」の前半、じれったいほどギャツビーはなかなか登場しません。
しかし、それとは裏腹に思いのほかあっけなくギャツビーは、ニックの前、いえ私たち観客の前に現れます。
ここの場面の描写は非常に印象に残りました。
華麗なるギャツビーで、ギャツビーの夢がまさに叶いそうになった時に、それを阻むことになったのは彼が激昂した場面です。
トムが苦し紛れに、ギャツビーの正体を立て続けに暴いた時に、思わずギャツビーはニックの言うところによれば、人殺しのような顔をしたのです。
このことにより、デイジーは引いてしまいます。
華麗なるギャツビーで、おそらく、このギャツビーの恐ろしい姿がなければ、最後にデイジーがトムに寝返ってギャツビーを見捨てることはなかったのではないかと思われるような、むしろギャツビーの最期よりも私はクライマックスに見えました。
その後のギャツビーは、もはや幻のようにどんどん影が薄くなって行きます。
もっとも、ではそもそも、人々にとってギャツビーの存在感がそれほどあったかと聞かればわからない、この空虚感をレオナルド・ディカプリオが存在感ある演技で魅了しているというのが、この映画の最大の見どころであるといえます。
感想
夢は未来に向かっていなければならない。
その夢に、過去は反省として存在したとしても、その夢の自分以外のもう一人の主人公は過去に手が届かなかった人であってはならないという想いを強くしました。
これが、華麗なるギャツビーを観た私の感想です。
華麗なるギャツビーというのは、かのフィッツジェラルドの名作ですが、実は読んだことはありませんでした。
きっと悲しい話だと思ったからです。
もっとも、今回この華麗なるギャツビーを観て、感想としてはやはり悲しい話であったことは間違いないけれど、単に悲しいという言葉に収斂されるものでもないとも思いました。
「華麗なるギャツビー」のギャツビーは、彼本人が創り出した偶像ではないでしょうか。
彼はデイジーに愛されたいがゆえに、デイジーが望むであろう愛すべき男性を想像して創ったのです。
もっとも、人というのは、自分が想像したような行動をするものではありません。
「華麗なるギャツビー」で、ギャツビーの夢は、デイジーという車に乗っかった夢でした。ですから、車が動くことにより彼の夢は悲しい結末になってしまったのだというのが私の感想です。
もし、彼の夢が、デイジーを踏み台にして、デイジーよりももっと綺麗で賢い女性をターゲットにするというものであれば、彼の未来もまた違ったものになっていたはずです。
ただ、ギャツビーもまた人です。
人はいつも理路整然とした行動ができるわけではないのです。
また、そうでない愚かな部分を持ち合わせている人こそ愛すべき人、この背理をレオナルド・ディカプリオが見事に演じ切っていて、実に見応えのある心に残る映画、それが「華麗なるギャツビー」に寄せる私の感想です。
あらすじ
最後に華麗なるギャツビーのあらすじをご紹介しましょう。
アメリカで人々が享楽に明け暮れていた時代に、ギャツビーという謎に満ちた大金持ちが現れます。
大きなお城に住むギャツビー、その半生を隣人であり、デイジーのいとこであるニックの語りで、華麗なるギャツビーは紐解いていくというものです。
もっとも、ニックがギャツビーと過ごした時間はわずかです。
にもかかわらず、ニックにはギャツビーは自分の過去を始め、素直に打ち明けるのです。
ギャツビーは、デイジーと恋仲でした。
しかし、ギャツビーは戦争が終わってすぐ帰ってこなかったために、デイジーはギャツビーを待つのに疲れて大金持ちのトムと婚約してしまうのです。
ところが、結婚式の前日にギャツビーからの手紙がデイジーの元に届きます。
しかし、時既に遅し、デイジーはギャツビーへの想いを秘めたまま、トムの妻となってしまいます。
華麗なるギャツビーで、ギャツビーはデイジーを自分の元に取り戻すべく、デイジーの望むような大金持ちになります。
そして、デイジーの家の灯りが湾の対岸に見えるお城を購入するのです。
ギャツビーは、ニックを介して、デイジーと再開を果たします。
トムの浮気に辟易していたデイジーは、またギャツビーに恋をしてしまいます。
しかし、ギャツビーが望むのは、トムと結婚するに至ってから現在まで、ずっと自分を好きでい続けてくれたデイジーなのです。
この多くを望みすぎることが、ギャツビーの一度は叶ったかのように見えた恋も夢も人生も、奪っていくことになるのです。
もう少し華麗なるギャツビーのあらすじをお話ししたいのですが、ネタバレになってしまうといけませんので、このあたりであらすじはご勘弁を。
評価
- 総合点:85点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★★
- キャスト:★★★★☆
- 映像技術:★★☆☆☆
- 演出:★★★☆☆
- 設定:★★★☆☆
作品情報
- 公開日:2013年6月14日
- 上映時間:142分
- ジャンル:ラブロマンス
- 監督:バズ・ラーマン
- 主演:レオナルド・ディカプリオ