さらば、愛の言葉よの紹介:ヌーベルヴァーグの巨匠ジャン=リュック・ゴダール監督が革新的な映画技術として3Dを用いた最新作。男と女の関係と会話を軸にめくるめく映像と音の世界が展開されるゴダール流3D劇。
さらば、愛の言葉よ あらすじ
映画「さらば、愛の言葉よ」のあらすじです。
ヌーベルヴァーグの巨匠であり、世界の映画界に大きな影響を与えてきたジャン=リュック・ゴダール監督が革新的な映画技術として3Dを用いた最新作。第67回カンヌ国際映画祭審査員特別賞、第49回全米映画批評家協会(NSFC)賞作品賞を受賞し、フランスのほか、ニューヨークでもスマッシュヒットを飛ばしている作品です。
夫の暴力から逃れたある人妻が独身で自由な男と出会います。ふたりは愛し合い、生活を共にしますが、やがてふたりの間には諍いが起こり、口論し、叩き合います。
一匹の犬が町と田舎を彷徨います。
季節はめぐり、男と女が再会します。犬はふたりのもとに落ち着きます。やがて夫がすべてを台無しにし、映画の第二幕がはじまります。
ふたたび描かれる夫の暴力から逃れた女と自由な男。第一幕と同じようであり、そうでもありません。
やがて犬が人間のメタファーとして描かれ、戦争の歴史的モンタージュが展開します。犬の鳴き声と赤ん坊の泣き声で物語は終わります。
男と女の関係と会話、引用を繰り返すセリフを軸に、「男」「女」「犬」「言葉」を表現するコラージュ、めくるめく映像と音の世界が展開されるゴダール流3D劇です。
さらば、愛の言葉よ ネタバレなし作品概要
映画「さらば、愛の言葉よ」の概要をネタバレなしで説明します。
本作の監督は、「勝手にしやがれ」「女は女である 」「気狂いピエロ」などの作品を手掛けたジャン=リュック・ゴダールです。ソルボンヌ大学を卒業後、映画批評誌「カイエ・デュ・シネマ」のライターとして活躍し、1959年長編映画デビュー作である「勝手にしやがれ」で世界の度肝を抜きました。同作は、フランスの若手監督に贈られるジャン・ヴィゴ賞、そしてベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞しています。
ゴダールの作品は3期に時期区分されます。初期のゴダールはヌーベルヴァーグの旗手として、即興演出や同時録音、ジャンプカットなど革新的な撮影技法や演出で注目を集めました。
しかし、1967年以降の中期は、毛沢東思想の影響を受け、商業映画と決別し、前衛的な映画を撮ります。
1979年以降の後期には商業映画に復帰し、「映画史」の完成を中心に力を注ぎつつ、現在に至ります。後期は物語の筋がわかりやすく提示されるのではなく、メタ映画の性格が強いものとなっています。
「勝手にしやがれ」で映画に革新を起こしたゴダールは、本作では、左右の目にそれぞれ異なる映像を提供するという方法で3D映画に革新を起こそうと試みています。
予告編動画
さらば、愛の言葉よ 感想
映画「さらば、愛の言葉よ」の感想です。
ゴダールの映画は万人受けするものではなく、合わない人も多いでしょう。本作の出演者は基本的に無名の俳優と言え、俳優への興味から作品に入ることも難しいです。また物語の筋よりもメタ的視点が重視される作品となっています。おそらく一度の観ただけではなく、咀嚼できないかもしれません。
注目のポイントの一つは3Dです。まず、なぜ3Dで撮るのかという疑問を作品のなかで払拭してくれるのかどうかがポイントになると思います。3Dの新しい撮影技法を観たとき、観るべき意味があったと腑に落ちるのかどうかです。
本作で重要な役どころを担っている犬は、ゴダールの愛犬ロクシー・ミエヴィルです。犬種はウェルシュ・シープドッグです。ロクシーは本作で、優秀な演技を披露した犬を表彰するカンヌ国際映画祭パルムドッグ審査員特別賞を受賞しました。犬好きの人にとっては、注目の一作です。
後半では戦争の歴史的モンタージュが展開されるわけですが、そのようなモンタージュは一度はどこかで見たことがあるような、予想できなくもないものと言えます。こちらの予想をどれくらい裏切ってくれるか、映画として効果的なものとなっているか、作品としてどれくらい昇華されているかがポイントだと思います。