カンヌ映画祭で物議をかもし、日本では倫理問題に揺れたフランス映画「ヴィオレッタ」。監督エヴァ・イオネスコの実体験を元にした衝撃の問題作です!今作がデビュー作となるアナマリア・バルトロメイの演技にも注目!
ネタバレ
映画「ヴィオレッタ」のネタバレです。
まずは、キャストのネタバレ。主人公・ヴィオレッタを演じるアナマリア・バルトロメイは今作がデビュー作となります。ルーマニア生まれの彼女は500人の中からオーディションで選ばれたという逸材。本当に今後が楽しみな役者さんです。
次に監督エヴァ・イオネスコのネタバレです。
団塊世代以降の方々はエヴァ・イオネスコと聞いてハッとされる方も多いかと思われます。
そう、この映画の監督エヴァ・イオネスコはフランス人女流写真家イリナ・イオネスコが自分の娘をヌードモデルとして被写体にした写真集「鏡の神殿(邦題・エヴァ)」のモデルだった人です。
つまり、エヴァ・イオネスコ監督が自分の経験を元に綴った自伝的映画なのです。
そして最大のネタバレは、日本公開にあたり映画倫理委員会が「区分指定適応外(レイティング指定できない)」という異例の判断を下したということ。
どういうことかといいますと、R18+以上の問題描写があるので各映画館は自己判断で上映を行うように、という事実上の放映禁止という判断を映倫がした、ということです。
これに対し、映画配給会社が異議を申し立て、再審査を要請。その結果「R15+(15歳未満は閲覧禁止)」という判断に撤回されたといういわくつきの作品です。
最後に原題のネタバレ。原題では「My Little Princess」という名前のこの作品は日本公開にあたり「ヴィオレッタ」と改題されました。
みなさん、この映画を観るときには「My Little Princess」という原題の意味を考えながら鑑賞してみてはいかがでしょうか。
以上、「ヴィオレッタ」のネタバレでした。
感想
次に感想を書いていきます。
「ヴィオレッタ」は母親にヌードモデルとなることを求められた思春期の少女が「母」という呪縛を解き大人になろうと葛藤する映画なのだという感想をまず持ちました。
母に気に入られたい・愛されたいという気持ちから、母は自分をモノのように扱い利用して写真家としての地位を築こうとしているという嫌悪へ移り変わっていく主人公の心をアナマリアは見事に表現したと思います。この心の表現は撮影当時10歳であったアナマリアだからこそできたのだという感想です。
「ヴィオレッタ」という邦題にある通り、この映画は主人公・ヴィオレッタの物語なんですが「My Little Princess」の原題にもある通り母親アンナの物語でもあるのです。
確かに、アンナはヴィオレッタを愛した。ヴィオレッタとアンナが二人で楽しく会話をし、笑い合うシーンがそれを証明しています。しかしアンナは写真家として成功したいという野心が捨てられなかったのです。
娘に拒絶されながらも追いすがる母親と、母に翻弄され逃れたいとあがく娘・・・これは「母が重い」と嘆く現代の子供たちにも通じるものだと思います。
確かに衝撃の問題作、という表現は間違ってはいませんが、この映画を観ることで「母と娘」の関係や倫理問題について考えるきっかけにはなると思うのです。
それだけに映倫が物語の本質をとらえず、描写だけを問題視し「区分指定適応外」の判断をしたことに疑問を感じざるを得ません。
以上、当作品の感想でした。
あらすじ
では、衝撃の問題作「ヴィオレッタ」のあらすじをご紹介します。
主人公は12歳の少女ヴィオレッタ(アナマリア・ヴァルトロメイ)。
写真家を目指す母アンナ(イザベル・ユペール)はたまにしか家に帰ってこず、ヴィオレッタは曾祖母に育てられていた。
ある日、ヴィオレッタは母に呼ばれ、写真のモデルになるように言われる。
母といる時間が楽しくて、母の言うとおり次々にポーズをとって行くヴィオレッタ。
しかし、時がたつにつれ母の様子が変わっていく。衣装は白いレースのドレスから黒ストッキングやガーターベルトへ変わり、赤いルージュに濃いアイメイクをほどこし妖艶なポーズを要求するアンナ。
さらに、衣装を脱がせ、過激なポーズをとらせたりと要求はどんどんスカレートしていく、というのが前半のあらすじ。
そして、個展を開いたアンナは新進アーティストの仲間入りを果たし、写真も高値で売れ始める。
ある時、アンナとヴィオレッタはシド・ヴィシャス(ジェスロ・ケイヴ)とのフォトセッションの仕事を受けるが、アンナはヴィオレッタに服を脱いでシドとキスをするように求める。
母の要求を拒み、撮影から逃げ出してしまうヴィオレッタ。この日を境にヴィオレッタは母への反感・嫌悪を表すようになる。
やがて、自分を見守り続けてくれた曾祖母が亡くなり、学校でも「ヌードモデル」をしていることでいじめられ、ヴィオレッタは孤独に苛まれていく。
一方、アンナの写真は児童ポルノなのかアートなのかという議論を巻き起こし、児童虐待をしているとしてヴィオレッタの親権を失いそうになるが・・・、というのが後半のあらすじです。
簡単にあらすじをご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
世界で物議をかもした問題作、一見の価値ありです。
以上、あらすじでした。
評価
- 総合点:80点/100点
- オススメ度:★★★★☆
- ストーリー:★★★★☆
- キャスト:★★★☆☆
- 映像技術:★★★☆☆
- 演出:★★★★☆
- 設定:★★★★☆
作品情報
- 公開日:2014年5月10日
- 上映時間:105分
- ジャンル:人間ドラマ
- 監督:エバ・イオネスコ
- 主演:イザベル・ユペール